12.根室線(花咲線)

根室線からの車窓(落石付近)

写真:根室線からの車窓(落石付近)


 根室本線は、道央の滝川から富良野、帯広、釧路を経て、根室まで至る400km強の線である。根室という名前の本線ではあるが、特急は途中の釧路までしか行かず、釧路から東は歴然としたローカル線であり、バスのような1両編成の列車が10往復弱しか走っていない様である。その根室本線の東側、釧路から根室までの愛称を花咲線という。根室の近くの花咲という土地から、または根室特産の花咲ガニから付けられたのだろうと思う。花が咲いているが如く華やかな土地になるようにという願いもあるかもしれないが。

 釧路から列車に乗った。乗客はけっこう多かった。と言っても、1両の列車なので高が知れているけど。東釧路を過ぎると集落が途切れ、林の中を列車は走っていく。途中駅が近くなると集落が現れる。駅間が15kmも離れているところがあるので、人気のないところを走っていることが多い。

 僕は、向かいの席にいた根室に住む60歳くらいのおばさんとお喋りをしながら車内を過ごした。よく釧路や札幌などには出かけるらしく、そのせいか、実際の年齢より若く見えた。数年前に大きな病気を患って何ヶ月も入院していたと言っていたが、とてもそんなには見えず、かなり元気に見えた。この日は息子さんがいらっしゃる釧路に遊びに行った帰りだと言っていた。もう1人の息子さんが東京に住んでいてよくそちらにも遊びに行くらしく、その東京と比べて、本州と違って北海道の特に東端は土地だけあって他には何もなくて寂れているでしょう、とか、ここの駅には昔は駅員さんもちゃんといたのに今はどこも無人駅になっちゃって…、北海道は人がいなくなる一方だ、となど言った。僕が、本州にもこんな感じで人気のないところを走るローカル線はいっぱいあるし、首都圏などの都会を除けば駅員がいる駅よりも無人駅の方が多いくらいですよ、と言うと、少し驚いた様子で、どこもそうなのかねぇ、と言った。どうやら、道内と東京以外にはあまり行ったことがないようだった。

 右も左も林の中を列車が走っていると、突然の急ブレーキ、そして、ドンという衝撃がした。すぐに運転手から、鹿をはねましたのでしばらく止まります、というアナウンスがあった。運転手ははねた鹿のところに行こうとしたようだったが、その鹿はすぐに逃げてしまったようだった。このあたりの運転手の対応は、慣れているのか、非常に手際がよかった。その後、何事もなく列車は再び走り出した。僕の向かいにいたおばさんは、今は夏だから草が茂っていて鹿がいるのがわからないんですよ、冬だと枯れちゃうからよく見えるんだけど、それで急に飛び出してきちゃってはねられちゃったんでしょう、と言っていた。さすが北海道、こういうことがよくあるんだ。

 目的地は根室だったが、途中の厚岸でその列車を降りた。(厚岸での様子は前ページで。)

 厚岸からまた根室線に乗り、根室を目指した。東へ行くと今度は木すら少なくなり、ただ荒涼とした草むらが一面に広がる景色に変った。木もろくに生えないほど気候が厳しいのだろうか。ここは花咲線だが、花など咲く雰囲気には見えなかった。そこには、牛や馬が放牧されている他に、野生に鹿もぽつぽつと見ることができた。本州ではおそらく見ることができない景色であった。草むらの奥に海が見えてくると、根室も近い。海も穏やかであった。このあたりの景色は広々としていて気持ちが良い。


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